上手い嘘



インターホンが鳴った。

休日のインターホン、嫌な予感がした。誰だろう。

そっとインターホンの画面を確認すると、そこには近所の主婦が二人映っていた。

ますます嫌な予感。
自治会の事か?ゴミ掃除の事か?それとも……一瞬で様々な事を想像した。

居留守を使いたいところだが、近所の人達に居留守を使うのは難しい。
ゴミを捨てる姿、洗濯物を干す姿、新聞を取る様子などを常に見られている。本当に暇な主婦が多い。

玄関を開けると二人はイキイキとした表情と口調で言った。

「おはようございます!」

朝からテンションの違いに圧倒される。

だが彼女達の話はさらに気分を落ち込ませるものだった。

このGWを利用して、近所の皆でバーベキューをしようと言うのだ。一軒の家が庭を提供すると言う。

聞いていると、既に参加する人はほぼ決まっているようで、全部で10世帯ぐらいらしい。

私の心は「嫌」で埋まっていた。
どう断ろうか?そればかり考えていた。
断るならこの瞬間に断らねば。後では断れなくなる。

いつまで経っても子供が減らないこの地域。
子供が成長するとともに、進学や就職でそのうち子供がいなくなり、子有りと子無しの差がなくなると期待していたが、そんな事はない。分譲地が拡大され、新しく若い世帯が増える一方だ。


私は予定している日を聞いて即座に言った。

「あ!すみません!その日は実家の親に頼まれた用事があって」

ただの「用事」だけではダメだ。
どんな用事?変更出来ない?と追及される。
先にこちらから理由まで言ってしまうのが綺麗に断る秘訣だと長年この場所に住んで学んだ。

「実家の家を修理するのですが、その業者と打ち合わせをする日なんですよ」

スラスラと口から嘘が出る。

「そう、残念だけど仕方ないですね」

二人はあっさり引いてくれた。
そもそも私などいない方が、皆に気を遣わせなくて良いに決まっている。

二人が去った後、背中が汗でビッショリなのに気付いた。
手を見ると小刻みに震えている。

何て事ないのに。
平気で嘘をつけたはずなのに。

この先も何度嘘を重ねないといけないのかと思うと憂鬱になった。




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Posted byころり


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