グレーのフィルター

鬱病
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――――――――前回の続き。


歯科医院の待合室で呼ばれるのを待っていると、いつもと違う緊張感があった。

定期検診にも来ているが、その時は治療をしない事が分かっているからか、これ程緊張しない。
だが今日は治療をするだろうと思うと、気分が悪くなってきた。

ダメだ、別の事を考えて落ち着こう。
大丈夫、大丈夫、と自分に言い聞かせた。

自分の名前を呼ばれ、苦手なあの椅子に座る。
症状を説明している間も、自分で自分の様子が変だと分かった。

早口で声が震えている。
震えている自分に気付くと緊張が増し、どうしよう、落ち着け、といくら自分に言い聞かせても動悸が早くなるばかり。

ここで「具合が悪い」と医師に伝えられれば少しは気が楽になるだろうに、逆に私は気付かれてはならないと、必死に平気なフリをする。

その後、椅子が倒され治療が始まった。

医師が言うには、歯軋りが酷い人は、詰め物が取れたりズレたりする事があるらしい。
その隙間が虫歯の原因になるとか。

痛みの原因は分かったが、そんな事より早く治療が終わって欲しいと、そればかり思っていた。

動悸が治まらず、その上口を大きく開けているものだから、吐き気がする。
医師が指を動かす度、吐き気と格闘するのに必死だった。





多分簡単な治療で、それ程時間もかからず終わったのだろうと思うが、私にとってはとても長く辛い時間だった。

治療が終わり、ようやく椅子が起こされる。

その時だった。
耳がキーンとなり、医師の声が遠のいた。
まるで自分が水の中に入っているかのような、全ての音が聞こえなくなる。

それと同時に目の前が薄暗くなった。
グレーのフィルターがかかったように、全ての物がモノトーンになる。

それでもまだ私はその症状を医師に伝えず、何とか気付かれずに返答しようとした。

医師が何を言っているのか聞こえない為、ただ「はい」とだけ繰り返し、私は椅子から立ち上がった。

するとグラッと天井が揺れ、まるで船の上にいるかの様に感じ、倒れてしまった。

医師と看護師が慌ててベッドに寝かせてくれた。

あぁ、まただ。
少し前にもこれと全く同じような事があった。
別の病院に行った時、治療を終え立ち上がろうとした時、同じように倒れた。

二度も同じ事を繰り返し、私はこれは明らかに精神的なものが原因だと確信した。

緊張や不安感が限界に達すると、こんな風に倒れてしまう。
目の前が薄暗くなり、音が遠のく。

これは私だけの症状なのだろうか?
他の鬱病患者も同じような経験をした事があるのだろうか?

とにかく自己嫌悪が半端ない。
病院に行くのが苦手だとか、怖いとかだけでなく、倒れて周囲に迷惑をかけるという失態。
そこに至るまでの間も、平常心を保とうと葛藤する自分を思い出すだけで苦しくなる。

あぁ、この先どうなるのだろう。
ずっと私はこのままなのだろうか。
病院に行くのが増々嫌になる。




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