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みんなちがってみんないい

2017/09/26 Tue 20:03

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近所に若い夫婦が引っ越してきた。

元々その家には老夫婦二人が住んでいたのだが、引越しの為に売りに出されたところ、新たに入居したのがその若夫婦、とその赤ちゃん。

老人二人が住んでいた時には、そのお宅は静かな家という印象だった。
時々奥さんを見かける事はあったが、ゆっくりした動きで耳も遠いらしく、自分から話している姿をほとんど見た事がない。そんな老夫婦だったので、近所の人達もどこか気遣い、彼らにはあまり煩い事は言わないでそっとしておいてあげよう、そんな雰囲気だった。

なのでもちろんその老夫婦はこの十数年、近所の行事には出た事もないし、役員もやった事はない。それでも誰も文句を言う者はいなかった。

子育て世代が多い中で、そういう別世代の人もいるというのは、私の中で救いだった。
色んな立場、色んな家庭がいる環境で住んだ方がずっと楽だ。
皆が同じ方向を向かなくてはいけない場所ほど辛いものはない。

だが老夫婦がいなくなってしまい、私は同世代の人がまた増えるのではないか?と内心気持ちが重かった。

それが、引越しして来たのは同世代どころか、20歳ほど年下の若い夫婦だ。
私は同世代よりは良かった……と少しホッとした。

だがしばらくすると、黙っていなかったのが近所の主婦達。


「あの若い夫婦、全く交流する気ないわよね?」
「会っても軽く会釈するだけで、話そうとしないし」
「それよりも子供の声、うるさくない?」
「来年は絶対役員やってもらうわよ」

朝ゴミを捨てに行くと、古株の主婦達がそんな会話を繰り広げていた。

「あ、ころりさん、おはよう。ねぇ、どう思う?あの若夫婦、感じ悪いわよね?」

早速私にも話を振られた。

「……どうかな。ほとんど会わないから……」と私は濁した。

いつもの井戸端会議、女性特有の悪口。
相変わらずで嫌になるが、でも確かに彼女達の言う通り、その若夫婦は全く周囲に馴染もうとしている雰囲気はなかった。あれでは近所の主婦に悪口を言われるのは目に見えていた。

しかし私も人の事が言えない。未だに馴染めているとは言えないから。

何十年経っても変わらないその主婦達の井戸端会議を見ていると、常にターゲットが変わるだけで、こういうのは永遠に続くのだろうかと思う。女が集まればどうして群れなくてはいけないのだろう?

「みんなちがって、みんないい。」

ふと金子みすゞさんの詩を思い出した。


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近所

水やり

2017/06/09 Fri 21:37

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家の小さな花壇に水をまいた。

春から秋にかけては花の手入れが必要になる。冬も花を植えてはいるが、手入れの簡単な花しか植えていないし、基本的に水やりは雨に任せておけば大丈夫。
だがこの季節になると、1日1回は水やりが必要で、もっと暑い季節になってくると、朝晩の水をあげる事もある。

花を育てる事は私にとって、癒しなのかストレスなのか……微妙なところだ。

綺麗に理想的に育てば癒しに感じるが、うまく育たなかったり枯れてしまった時にはイライラしてしまう。この完璧主義を少しでも緩めなければ。

そんな性格なので、朝起きた後には、自分の食事よりも花への水やりが気になる。
早くあげなくては、枯れてしまってはいけない。

だけど相変わらず起きるのが遅めな私。
本当はまだ人気の少ない早朝に水やりをしたいのだが、ついつい起きるのが遅くなり、朝の10時頃に水やりするので精一杯。

その日もそっと窓から外を確認し、近所の主婦が周囲に出ていないかを確認してから玄関を開けた。
もう十何年もこの地に住んでいるのに、未だにオドオドとこんな事をしている自分が情けない。

慌てて花壇に水をあげていると、背後でガチャという音がした。

しまった!近所の主婦が出てきてしまった。振り返るべきか……気付かぬフリをするべきか……。

と迷っていると、あちらから声をかけてきた。

「あら、お久しぶりですね」

私は今気付いたように振り返り、「あ、こんにちは」と笑顔を作った。


そのまま挨拶だけで終わるかと思ったら、その主婦は私の家まで近寄ってきて、「どんな花育てるのですか?」と話し始めた。

その主婦は近所の中ではまだ話しやすい人。
温厚でいて会話上手、誰からも好かれそうな羨ましい人。

私は滅多に会話しない近所の主婦に話しかけられてテンパってしまい、早口で次々と言葉を発した。楽しく話さなきゃ、沈黙で気まずくなってはいけない。そう思うとやたらテンションが高い変な人になってしまう。

だけどその主婦は優しく頷き、話を合わせて笑ってくれていた。

この人となら仲良くなれるかしら?心のどこかでそう思い始めた時、また別の近所の主婦が近寄ってきた。

「あれー?ころりさんとお話中?珍しいね!」
「あ!おはよう!そうそう、昨日はありがとう、助かったわ」
「いいのよ、お互い様じゃない。それよりバザーの担当の件だけどさぁ」

と、あっと言う間にその主婦達は学校や子供の話に夢中になった。
私はその場でどうしていればいいのか。立ち去ろうにもここは私の家の玄関先なのだ。

さらに運の悪い事に、また別の主婦が自転車に乗って通り過ぎようとし、また同じように足を止めて会話に入ってきた。
その主婦は私は見た事もない人だったが、他の二人の主婦はママ友らしく、「いつもの仲間」的な空気を発していた。

とても居づらかった。最後に入ってきた主婦に至っては、私に挨拶もなく顔さえ見ない。私も自分から挨拶する勇気がなかった。彼女達の出来上がった輪に入れないし、学校の話題で夢中なのに、私に何が言えるだろう。

たまらず、「それじゃ、私は」と言い、家の中に逃げ込んだ。

彼女達は何と思っただろう?感じが悪かっただろうか?でもあの場に黙って立っている方が目障りに思えた。

やはり玄関を開けるのは緊張する。
出来るだけ早起きして誰もいない静かな朝に水やりをやりたい。


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近所

引きこもり

2017/03/14 Tue 20:29

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買い物から帰宅すると、隣の家の主婦の姿が見えた。

ボスタイプの苦手なその主婦。

出来るだけ会わないように、避けるようにと過ごしていたら、何年も会話せずに過ぎてしまった。前回会話したのはいつだったのか思い出せない。

この日も避けたいと思ったが、既に相手の視界に入ってしまっていたので、今更歩調を緩める事も隠れる事も出来なかった。

近付くと相手も気が付き、

「あら!お久しぶり」と顔を上げた。


「お久しぶりですね」と私も出来るだけ自然な笑顔を向けた。挨拶だけで終わりますように。

「えー!ちょっとかなり長い間見かけなかったけど、元気だったぁ?」と私の期待に反して隣の主婦は本腰で話し始めた。彼女は手に持っていたガーデニングのスコップを土の上に置き、手に付けていたグローブを外した。

これは長くなりそうだ。

私の心はモヤッとしたが、何年も顔さえ合わせなかったのだ、この場は近所付き合いをしておくべきだろう、と私も買い物袋を玄関ポーチに置いた。

「元気ですよー、変わりなく」と私が答えると、

「心配してたのよ、ころりさん、体調が悪いらしいって聞いたから」とその主婦は言った。


何だ?そんな噂があったのか?

「そんな事ないですよ。元気元気!」と私はわざと明るい声で言った。

するとその主婦は

「良かったー。このまま引きこもっていたら大丈夫かな?って心配してたのよ。外に出られるようになったのね」と言った。



ズキズキッ。

何だ何だ?引きこもっていたら?外に出られるようになった?
私は皆にどんな風に見られていたのだろう。

確かに私はほとんど家に居るから誰から見ても「引きこもり」なのかもしれないが、こうも面と向かって引きこもっている事を言われてしまうとダメなレッテルを貼られた気分になる。

これも被害妄想なのだろうか?
相手は本当に心配してくれていたのかもしれないが、引きこもりの私は「引きこもり」と言われる事に傷つく。

それが悪い事だと思っているから。

その証拠に、その後主婦は続けた。

「じゃあ今は働いてるの?」


「まぁ、少しだけ……時々ね」と私が答えると、

「今のうちにもっと稼がなきゃ勿体ないわよ。引きこもっていた分取り戻さなきゃね!」と言って笑った。

悪気はないように見える。

だけどその会話からようやく解放された時、心がズーンと重くなっている自分がいた。



>前回記事へのコメントSさんへ
確かに前回の記事に「私も同じです」と共感して下さった方々がおられました。
子無しだとか、似たような環境だと同じように感じる方もいると分かって
少し慰められます。だけどその人達同士が身近で協力し合える訳でもないので
私だけじゃない、という気持ちだけが支えですよね。

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近所
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